2011年9月3日土曜日

リリシズムができるまで その2

本を出そう、そう思ってはみたものの、20年前に亡くなった漫画家のいまとなってはマニアックな世界。「同棲時代」といえば「懐かしいね〜」と言われて終わってしまう。これは思っていたより険しい道と気づいた2007年春。とりあえず読もう、再び読んでみよう、ということで、あらためて上村一夫の漫画を読み、原稿以外に700枚近くあるカラーイラストを整理した。その作業中、父が亡くなる一年前くらいから描きためていたという一枚絵を目にした。亡くなってから見つかったその作品群はほとんどが未完であったけれども、父の集大成とも言えるべき凄まじく美しい絵で、それは初めて父が自分のために描いた商業用ではない絵だった。亡くなってすぐの頃はなんだか絵から妖気が出ているようで触るのも恐ろしく、結局寝かし続けてしまっていた。でもこれはやっぱり公開するべきなんじゃないか、とその瞬間思った。そしてむかし父が初めて事務所を構えた神楽坂で「幻の一枚絵」原画展を開催した。迷いながらも沢山の方々に見ていただけて本当によかったと思った2008年春。つづく